溢したコーヒーを拭いている時に、ふと昔の事を思い出した。
箱に詰められた、不思議な形をした野菜や果物。真っ赤なドラゴンの卵のようなフルーツもあれば、バナナみたいな真っ黄色の野菜など、普段見かけない物が沢山詰め込まれていた。
毎年私を楽しませようと、工夫して面白いものを送ってくれていた。
会うたびに抱きついてきて、ジョリジョリした顎鬚を私に擦り付けてくる。
まだ子供なのに、肩揉んでなんてお願いしたりもした。
もうほんとに小さい頃だったから、彼の言葉は私の中には残っていないけれど、優しくしていただいたことだけは、いつまでも私の中に残っている。
そんな彼に、何もしてあげられなかったことがずっと心残り。