起こさないでね
もうこれ以上殴られたくない。
視界がボヤけてほとんど前が見えなくなってきた。
そこで私は目を覚ました。
また酷い夢を見てしまった。でも夢であったことに少しホッとする。
現実の世界ではありがたいことに、私をわざわざ殴りにくる人はいない、いつも平和に過ごせる。ただ物理的には平和だが精神的には平和とは言い難い気がする。だからこそあんな夢を時どき見るのだと思う。私の見る夢は、私の中に生まれる嫌な感情を別の形でうまく表現していた。
不幸なことに楽しい夢はあまり見る事ができなかった。見たい夢なら沢山あるのに、決まってそういった夢はことごとく見る事ができない。誰かが意地悪しているのかな。別にいいんだけど。私からしたら大した意地悪ではないから。だって現実世界で楽しめてればいいもん…。
現実世界で楽しめていれば。
幸せな人は、幸福とはなんだろうと考えることはないと思う。ただ私はそのことについてよく考える。もしかしたら私が幸福の外側にいるからかもしれないけれど、そうとは考えたくない。ただ単に考えることが好きだから考えている。ある一定のラインまで考えていると、納得できる答えが出てきたり出てこなかったりする。今までの私はそうして出てきた答えを元に人生を進めてきた。
考えすぎてたな。私が出した答えはあまりにも論理的で、確かにそうかもしれないけれど、現実的ではないと言う様な考えで溢れていた。結局はどれも綺麗事で現実離れした答えばかりだった。
現実世界で現実離れした思想を抱き、結局はまた非現実的な夢の中の世界に引き戻されている気がした。いつになったら夢から覚めるのだろう。
どこかから親切な人がやってきて私を起こしてくれればいいのだけれど、そんな親切な人いるのかな。
でもね、本当は誰にも起こされずにいつまでも眠っていたい気もする。
誰かに殴られようが、お化けに追いかけられようが、私は寝る事が好き。
私がマゾヒストだからというわけではなく、嫌な事があっても、それを上回るくらい寝る事が好きということ。
だから今日もふて寝する。誰にも起こされないことを祈りながら。