ピュアを極めていた頃の話

高校生の頃、放課後自習室に残って勉強していたことがあった。今の自分からしたその当時の自分はとても偉く見える。まあそんな事は置いておいて。その自習室は仕切りがある個別のブースと仕切りがなく少し大きめのテーブルが置かれているだけの場所があった。

 

私はいつものように広々とした仕切のないところで勉強していていた。そこで勉強していると知り合いがよく声をかけてくる。私はそれが少し嬉しかった。なんせ一人でする勉強は退屈だし孤独だしそれらの感情は時間が過ぎるにつれ増大していくからだ。

 

ある時、同じクラスの女の子が隣に来て、ここで勉強してるの珍しいねと言ってきた。

私は何ヶ月もの間そこで勉強していたので、そんな事ないよと言った。

彼女は私もこれからあなたの横で勉強しようかなと言ってきた。

 

いつも孤独に一人で勉強していた私は嬉しかった。

嬉しさを隠した上で、別にいいよと伝えた。実際には嬉しさをうまく隠せていなかったと思う。

彼女とは同じクラスではあったがあまり話したことがなかったので、声をかけられた時すこしびっくりした。

 

そして次の日から彼女は私の隣に座るようになった。彼女は勉強にすぐ飽きてしまうタイプで、私たちはよくおしゃべりをするようになった。何を話していたかはあんまりよく覚えていない。それくらい日常の些細なことについて話していたのだろう。夜まで勉強しているとお腹が空いてくるので、2人で食事に行くこともあった。

 

その日もまた私たちは夜まで勉強していた。

 

不意に彼女は私の手を握ってきた。えっ!私は少しドキッとした、いや正直かなりドキッとした。あまりにも急だったのでその時の私は驚きすぎてかなりブサイクな表情だったと思う。

どうせいつもブサイクだろと思った人は頭チョップしてやる。

 

何食わぬ顔で私は「どうしたの?」と彼女に聞いた。

 

彼女はいつもとは違った甘えた声で、眠くなっちゃったと私の手を握ったまま微笑みかけてきた。

 

私は彼女がこんなにも恐ろしい人間だとは思っていなかった。何だこれはと思いながら、顔が熱ってきた。

 

私がどうしていいのかわからないでいると、眠いから腕をつねってと言ってきた。

戸惑いながら私はその柔らかい肌に触れた。そして優しくつねった。

 

彼女は嬉しかったみたいで少し元気になり、もう一度勉強に取り掛かった。

その後の私は彼女のせいで勉強なんてできなかった。多分勉強している風でページをめくる事もできずにただ眺めていたと思う。

 

今思うとなんてピュアな高校生だったんだろうと笑けてくる。

 

彼女とは結局3週間くらい一緒に勉強した。

 

ただ彼女はある時からぱったり現れなくなってしまった。同じクラスなのでどうしたのか様子を伺っていたが、何だか私を少し避けているようだった。

 

えっ

何でだろ

 

私はこれまでを振り返り何か失礼なことをしなかったか考えた。ただ何も思い当たる事はなく、ただ困惑していた。

 

私と彼女がもう一度一緒に勉強することはなかった。そして二人はそのまま高校を卒業した。

あの時彼女は何を感じていたのかその時の私は分からなかった。ただ楽しかった日々が突然終わってしまったことが悲しかった。

 

 

 

 

 

 

 

今日もブログを読んでいただきありがとうございます。

この話には続きがある。この後の話を聞けば彼女が何故急に私を避けるようになったのか分かる。ただそれは彼女と私だけの秘密にしておこうと思う。