Romi diary

日常の些細な出来事や最近読んだ本などについて書いています。読む人は殆どいないので好きなことをのびのびとかけています。

自分が必要とされない世界

夜ご飯を食べ終わり腹休めしていると、テレビ画面に私の応援していた人が映し出されていた。

一目でわかるそのデカさ、隣にいるアナウンサーが子供に見える。
テレビの中のその人は少し疲れた表情をしていた。
きっと自分を追い込みすぎるその性格のせいで、とうとう精神のストレス許容範囲を飛び越えてしまったのだろう。或いは長旅の節目で、色々なものから解放された表情にも見えた。

「どうしてこのタイミングで引退を決意されたのですか?」
アナウンサーがそう質問した。
悔しそうな表情を浮かべ、その人は引退するに至った経緯を話し出した。

 

 


2018年10月27日

前のめりな姿勢、口は常に開いており、鋭い視線を相手に向けている。残り時間は4分ほどだったが、ようやく出番が回ってきた。その4分で彼の熱量が並大抵のものではないことが感じられた。この日世界最高のバスケットボールリーグ(NBA)にて、渡邊選手は日本人として2人目のデビューを果たした。

シュートを外した後、悔しそうに手を叩くシーンはとても印象的。

試合で大差がつき負けが確定しているようなゲームでも、彼は自分の持ち味を生かして最後まで戦っている。その姿勢を評価される事もあれば、あまり評価されない場合もある。どちらにしろ彼は一生懸命プレーし続けた。

「時間があると練習するか寝るくらい」
バスケで活躍するために、趣味には時間を割きたくないという。なんともストイック。ただNBAで活躍するにはそれ程の犠牲が必要なのだ。

 

 

 

 

渡邊選手はただ一心にバスケが上手くなりたいという気持ちを元に常に高みを目指していた。

そんな頑張っている姿を応援しに大谷翔平選手が試合を観に来てくれた事もあった。


そんな中、渡邊選手は3人の若手と熾烈なポジション争いをすることになる。
3人とも渡邊選手より若く、将来をとても期待されている。その影響でプレータイムも前よりも激減していた。
チームから必要とされなくなることはこの世界ではよくあること。渡邊選手もまた名前を呼ばれる機会を求めて他のチームと契約するに至った。

 

今日が最後のプレーになるかもしれない。そんな焦りの中、無保証の契約を勝ち取る。
次のチームでも彼のハッスルする姿勢は変わらない。
このチームで、渡邊選手は日本人初となる20点以上となる21得点を記録することとなる。
とてもいいシーズンとなった。彼も少し希望が見えてきた頃だと思う。

だが、次のシーズン
不幸なことに、渡邊選手はふくらはぎを痛めたり、コロナウイルスに感染したりと、立て続けに悪いことが起こってしまう。

 

そして思い通りにいかないまま契約が終了したことに伴い。
また、次のチームを探すことになる。

 

ギリギリのところで再び無保証の契約を勝ち取ると、自身のシュート能力が大爆発!


前シーズンの活躍により次のシーズンは優勝候補のチームに所属することができた。

シーズン序盤チームからある程度の出場時間が与えられていた。

 

 

ただみんなの期待していた通りに事は進まなかった。
得意としていた離れたところからのシュートもなかなか決めることができず、次第に役割がなくなっていった。

 

それでも
「壁があるのは自分が成長している証」
そう自分を鼓舞しながら、わずかなプレータイムを勝ち取るために奮闘する。

優勝できるチャンスは誰にでも与えられるものではない。だからこそどうしても今いるチームで頑張りたかった。

 

 

しかし気持ちとは裏腹に、チームからは必要とされなくなった。

そしてトレードでチームを離れることとなる。

 

 

 

強いものしか必要とされない世界で戦うとはこういうものなのだ。

 

 

 


トレード先は偶然、一番初めに契約したチームだった。そのことに少しホッとしていたらしい。
30歳を迎えて、「20代はどんな理不尽なことがあってもアメリカで頑張る」という目標も達成していた。
だから、後は思う存分バスケを楽しもう。渡邊選手はそう考えていた。

 

いつものようにアップをし自分の出番を待っていた。

コーチから名前を呼ばれ、張り切ってコートへ向かう。

 

この日、なんだかおかしな事が起きた。


上手く体に力が入らないのだ。今までもこのようなことはあったが、ここまでひどくは無かった。
プレーも以前の輝をほとんど感じなかった。あるのはもどかしそうな表情だけだった。


このチームは主力のほとんどが怪我しており、若手の育成に力を入れていたことから、渡邊選手はその後2度とプレーすることはなかった。

 

 


ここでまたしても必要とされなくなってしまう。

 


そして今、テレビで引退発表していた。


「日本のどのチームでプレイしたいですか?」
アナウンサーが質問する。

 

渡邊選手には日本のバスケットボールチームから数多くのオファーが来ていた。

メンタルの問題があり今まで通りのプレーができるかわからない、また世界最高のリーグで経験を積んできたことから契約額は跳ね上がり誰もが簡単に契約をオファーできる状態ではなかった。

それでも尚、渡邊選手を必要としているチームが沢山あった。

沢山の人が彼に勇気や希望をもらい、今の彼の状態はさておき、契約したがっている。



 

 

最後に

6年間命を削って頑張ってきたのだから、
住み慣れた日本で、今はゆっくり休んでほしい。
そして日本のどこかのチームでまた楽しくバスケをしている姿を観れたら嬉しいな。